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-よみもの-

「あなたのおいしい記憶」エッセー、作文コンテスト2020 作文部門優秀賞

最後のとん汁

「ヤァメーン」
このかけ声でぼくの辛くてきびしい二時間が始まります。
一年生から家族のすすめで習い始めた剣道は、先生がとてもきびしく辛い事が多いです。金曜日と日曜日の夕方五時から二時間、具合が悪い時以外は休む事なく六年生になる今まで一生けん命続けてきました。
剣道の夏は防具が暑くてとても苦しく、冬はとても寒いです。特に冬は辛く、体育館の冷たさがはだしの足に伝わり感覚が失くなってしまうほどです。その中でも一番きびしいけい古が寒げい古です。寒げい古は、まず土手を防具のまま走り、その後いつもより長いけい古をします。寒くてとても嫌だけれどこの寒げい古の後にお母さん達が作ったとん汁を食べます。
このとん汁は、豚肉がたくさん入っていて大根や人参、うどんも入って具だくさんです。大きいお鍋に三つ分、けい古の終わりに用意されとても良いにおいがします。けい古が終わるとあつあつのとん汁をみんなでフウフウとさましながら食べます。みんなできょう走しておかわりをするころには体中ぽかぽかになっています。そして、食べ終わった後、先生は一人一人に竹刀を渡しながら、
「がんばれよ」
と言います。いつもはこわい先生がこの時はとても優しいです。
そして、このとん汁を食べるのは今年で最後です。剣道は辛くてやめたくなる事が何回もあったけれど、このけい古の後一緒にがんばった先生や仲間達と食べるとん汁は、特別だったなと感じています。

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「あなたのおいしい記憶」エッセー、作文コンテスト2020 作文部門優秀賞
最後のとん汁
作・社員の家族

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