
Readings
-よみもの-
「あなたのおいしい記憶」エッセー、作文コンテスト2020 エッセー部門優秀賞
お弁当つづくよどこまでも
娘が小学3年生の時、学校の給食室が改装となり、約半年の間、お弁当持参となった。
当時、キャラ弁が流行っていたため、私も工夫せねばと意気込んだ。
が、そもそも料理が得意でないので、まずは、型をいくつか買ってきて、のりやハムをハートや星に型抜きし、ごはんに乗せて娘に持たせた。
その日は遅くなり、深夜に帰宅すると、テーブルに娘からの置手紙があった。
『ごはんはのりたまでおねがいします。なつより』
それからは、普通のお弁当にした。
娘が中学受験の際、受験に持たせるお弁当は気の利いたものにせねばと、口には出さなかったが、私はそわそわしていた。ある日、娘から言われた。
「受験だからって、特別なお弁当にしようとか思わないでよね。」
普通のお弁当にした。
娘が中学生になり、お弁当生活が始まった。一般的にはお嬢様学校と言われる女子校だったため、上品なお弁当にしようと、切り干し大根、ひじき、野菜サラダなど、ヘルシー女子っぽい素材にした。一週間くらいたったころ、娘からクレームがきた。
「副菜みないなのばかり。お肉ド~ン、みたいなのが食べたい。」と。
それからは、鶏の照り焼き、生姜焼き、肉味噌炒め、牛丼、親子丼、焼肉丼、ニラ玉豚の本つゆ炒めなど、とにかくお肉ドーン、ごはんギュギュッ、という茶色いボリューム弁当にした。
ある日、夫から言われた。「なつが、『最近、ママがお弁当の腕を上げた。』って言ってたよ。」
ようやく及第点がもらえた。
娘は今、高校3年生、お弁当生活ももうすぐ卒業かと思うと、やっと終わるという気持ちと寂しい気持ちが絡み合う。これまで一度たりともお弁当を残したことはなく、米一粒残らず、綺麗に空になってくる。今日のお弁当イマイチじゃなかった?と聞いてみても、大丈夫、おいしかったよ、と気を遣う。毎日、仲のいい友達とぺちゃくちゃしゃべりながら食べてる様子、時間がなくてかっこんでる様子、など想像すると、微笑ましく、元気に成長していることへの嬉しさを感じる。
お弁当箱を自分で洗わせようと思ったこともあったが、その時間は私の至福の時間であるので卒業まであと少し、私の方で享受しよう。
コロナ禍で昼食時の外食が減った夫が言ってきた。
「お弁当いいね。持っていこうかな。お肉のおかずと卵焼きがあれば、十分だよね。」と。
『なんですと?今年で終わりと思っていたが、これからもまだまだ?それに、卵焼きってそれなりに手間かかるのよね~、うん、心とよく相談しよう。』
INFORMATION
お弁当つづくよどこまでも
作・社員
他の作品を読む
これも好きかも
